林トモアキ『レイセン File2:アタックフォース』(角川スニーカー文庫)

 連載は全部読んでるし、と思って積ん読の山に乗せようとしてふと目次を見たら、なんと半分が書き下ろし。慌てて読み始める。なんと、『お・り・が・み』〜『マスラヲ』のミッシングリンクにして忍者村の園長さんの正体話。本編のストーリーの進行自体にはまるで関係無いと言えば関係ないんだけど、これが実に楽しい。いつもぶっ飛んだ主人公の活躍する話の影になってて気がつかなかったけど、この作者、恐い伝奇なお話もレパートリーのうちなんだ。いいねぇ、こういう方向のお話もまた色々と書いて欲しいなぁ。

Togetter - 「土曜日の朝は恒星間宇宙船にのって」

もちろん俺が知らなかっただけなんだろうけど、これってこれまでのハードSFとかでもあんまり見なかった観点だなぁ。*1 放射化するってことは半減期を持つ核種になるってことだから、船体がどんどんと削れていくわけか。で、解決策としては「加速器的シールド」か、あるいは電離させて磁場シールドか、というあたりが想定される、と。後者はまんま恒星間ラムジェットか。

*1:一方、スタートレックデフレクターを航宙艦に標準装備させた。もちろん当時想定してたのは岩のかけら的なものだろうけど、なんか面白い。

宇宙で堪能できるビール開発の本格化 - スラッシュドット・ジャパン

 すでにそういうコメントが幾つもついてる(#1833596, #1833673, #1833768)けど、無重力の閉鎖環境で炭酸飲料って、なんか徹底的に不向きなものの代表のような気がするな。*1 素直にワインなりウイスキーなりを持ち込めばいいと思うんだが、やっぱ世の中には「ビールでプッハーが無いと観光/休暇じゃない」という人たちが一定数存在するのだろうな。
 ま、宇宙観光でアルコールなら、どう考えてもロシアが先に実現しそうな気はする。軌道上に滞在する観光自体はボーイングとビゲローの方が先かもしれんが、「宇宙観光でアルコール」なら。

*1:宇宙空間に滞在した大麦の子孫で醸造したビールぐらいなら洒落で済むし、宇宙環境でのイーストの増殖と発酵の研究ってのはそれはそれで意義がありそうだけど。

庵田定夏『ココロコネクト カコランダム』(ファミ通文庫)

 <ふうせんかずら>、この嫌な性格、どっかで見たことがあると思ったらQ*1だ。試したいのか導きたいのか見て楽しみたいのか、独自の論理があるようだけどそれがなんなのかさっぱりわからん、わかってるのは謎の超パワーを持ってることだけ。とすると今回の<二番目>はQ2か。
 何はともあれ、今巻は青木が実にいい男であった。いやもう、他の感想やら印象をぶっとばすぐらい。
 ところで、pp.243-244で後悔してるのは誰だ? 素直な話の流れとしてはその直前に退行現象を起こした人だけど、現象の途中に後悔する? それに内容が伊織と丸かぶり。そう思ってみると途中に区切り記号が入ってることとも合わせ、これは伊織の心情描写であっても不思議はない。とすると実は太一は、思い出したら「あああ」となる過去の持ち合わせがないという世にも珍しい人物で、故に今回はいじっても面白くないとQ2に思われたので見届け役になったし、またそういう人物であることが次巻以降への伏線?

ココロコネクト カコランダム (ファミ通文庫)

ココロコネクト カコランダム (ファミ通文庫)

*1:新スタートレック』のアレ。

中村一『めぐりあう鼓動―覚醒遺伝子』(電撃文庫)

 うーむ、まる2冊かけてこんなもんか。いや、それなりにええ話には仕上がってるとは思うんやけど、デビュー作いきなり隔月刊でゆったりまとめるチャンスを得て、そいでまだここまで中途半端で世に出すか。悪くない出来だとは思うが、さらにここから11月以降になる次の一冊を「期待して待つ」と思わせるほどの魅力では、残念ながら、無いな。

めぐりあう鼓動―覚醒遺伝子 (電撃文庫)

めぐりあう鼓動―覚醒遺伝子 (電撃文庫)

中国、2機目の月周回探査機「嫦娥2号」を打ち上げ | 長征 | sorae.jp

 うーむ、いまいっちょwktkを感じないのは、次の着陸機の場所を選定するため、という割り切り故か。最初っから、面白い科学的成果を出すことが眼中にない探査機、というのもなかなかに珍しい気がする。もっともそれも、ポンポンと次から次へと打ち上げができるからではあるな。次が何年後になるかわからないので一つの機体にこれでもかこれでもかと機材やら新技術やらをてんこ盛りにするどっかの国とは、ほんと、好対照だわ。
 で、面白そうなのが↓

まだ打ち上げられていない嫦娥2号ですが、既にその最終段階について、3つの案が検討されていると、新華社が報じています。

これによると、嫦娥2号の探査が終了した時点で


1. 「かぐや」などと同様、延長探査を行った上で、最終的に月面へ落下させる。

2. 衛星の軌道を変えて、深宇宙探査機とする。

3. 地球トランスファー軌道に投入し、地球の衛星にする。



というもののようです。

目的を割り切ったが故の余裕を持ったお遊び、という感じ。一方↓はなんかちょっと気になる分析。

China's Mystery Moon Rocket
ttp://www.spacedaily.com/reports/China_Mystery_Moon_Rocket_999.html

10月1日打上げ予定の嫦娥二号が何か怪しいというお話。
確かに一号の時と比べても、情報の露出が少ないように思える。
不審な点は他にも。何故か打上げ機が一号のときから変更されてる。

一号の打上げ
ttp://news.xinhuanet.com/photo/2007-10/24/content_6937280.htm
二号の打上げ前試験
ttp://news.163.com/photoview/00AN0001/11049.html#p=6HGAHK6T00AN0001

御覧の通り、一号はストラップオンブースタ無しの長征3号A型、二号はブースタが2個付いた3号C型。
で、変更する理由がいまいち判然としない。前回に比べて早く月に付くらしいけど、
別に前回2週間弱かかったけど特に不都合はなかった。
著者は3Cを使う理由は早く月まで到達させるためではなく、打上げ能力の向上が必要で、
嫦娥二号の諸元や写真がほとんど出てないことからそこに何かが隠されてるのでは、と推測してる。


つーか中国って、衛星の外観の写真とか確かにほとんど出ないよな。
神舟ですら全体がちゃんと写った写真ってほとんど見た記憶がない。
地上に転がってる帰還カプセルとか模型ばっかり。

なんかサプライズでも用意してるのか、それとも単に探査機で冒険しないぶん打ち上げ機はなにか新らしいことの実験とかなのか、はたまた「月への所要時間の短縮」に過剰な国威発揚的意味づけをしてるのか、さて?

おかざき登『図書館迷宮と断章の姫君 3』(MF文庫J)

 打ち切り総力戦後半全力ダッシュで大団円。面白かったんだがなぁ。この妙ちきりんな世界の風景と生態をもっといろいろ見たかったんだが、そういう方向性はやっぱ流行らんのか。ま、前巻で扱いの悲惨だった誠十郎くんにちゃんと見せ場があった、というか美味しいところを攫ってってくれたんで多少は溜飲も下がったことだし、これはこれで良しとしよう。この作者の書く雰囲気は実に素敵なので、また面白い新作で出会えますように。

図書館迷宮と断章の姫君 3 (MF文庫J)

図書館迷宮と断章の姫君 3 (MF文庫J)