有人宇宙活動の幻想:宇宙政策シンクタンク_宙の会

 ふむ、こういう「人類は現状のホモ・サピエンスの物理的・生物学的特徴をそのまま維持すべし」という立場からは、地球表面とまったく同じ環境以外への定住などナンセンスということになるのか。強い心身一元論的な立場とでもいうのかな? こういう立場だと、スペースコロニーや世代宇宙船はあり得ても、重力制御が実現しない限り*1テラフォーミングはあり得ないわけね。

この中で「火星に現状のままでは人が住めない」とありますが、たとえ「トータルリコール」のような地下カプセル化された世界でも、或いは万一所謂テラフォーミングが出来たとしても、私はさらに強いNegative Discovery として現状だけではなく「火星に人は定住できない」と言ってよいと思います。それは科学目的の有人火星探査が出来ないと言っているのではありません。(それは無人探査と有人探査の利害得失を検討した上で決めれば良い話です。)
何故「火星に人は定住できないか」。それは火星への人類進出を描いたレイ・ブラッドベリ火星年代記」のラストに明示されています。即ち「火星人を見せて」という子供に父親が「ほら、そこに居るよ」と運河を覗きこませると、そこには自分達の影が映っていた、という有名なシーンです。
これは何を意味するか。それは単に情緒的な話ではなく、地球人がもし火星に定住できたとした場合の物理的事実を物語っています。仮に酸素、温度、対放射線等々火星上で人類生存の総ての環境が整えられたとしても、唯一克服不能なのが、地球に較べ3分の1しかない重力の問題です。火星移住の一世は兎も角、二世世代以降は1/3G世界の人間であり、地球に来ることは難しい、即ち「火星人」として生きるしか無い訳です。(月の場合、1/6Gですから言うに及ばずです。)

 理解は十分にできるけど、賛同はできないなぁ。これはもう宗教的な違いだろうね。俺的には「人類のミーム」が永遠に受け継がれることが最優先で、それを担う主体が生物学的にホモ・サピエンスであるか否か、炭素・水・DNAベースの有機生命体であるかそれ以外か、なんてのはかなりどうでもいい。人類はそのミームの消滅を防ぐために「種の拡散」を行うべきであり、そのために必要なら生物学的or機械的人体改造でも義体化でも電脳化でもなんでもあり、願わくばその中に現在の俺という認識主体と連続する何かが含まれていますように、だな。

*1:ただし裏技として、『終局のエニグマ』(ネタバレになるので反転)的な施設の建設という解はあり得るかも。

藤原祐『アカイロ/ロマンス 5 枯れて舞え、小夜の椿』(電撃文庫)

 うふふ、いよいよ電撃の黒い太陽にして全日本暗黒ライトノベル連合特攻隊長の本領が出てきたよ。巻き込まれ主人公にとっても、自分の置かれた立場に伴う責任に必死なヒロインにとっても、ここまでドツボで最低最悪な展開はそうはないだろうな。記憶の曖昧さをはじめとする散りばめられた伏線にも雅お姉さんを追い求めるというもう一つのストーリーの主軸にも最悪のオチがついて、ここで「待て次巻」ですと!? しかも「秋の終わりか冬の初め」とは、読者まで絶望させる作者畏るべし。

NASA火星無人探査車、最大の隕石発見 : ニュース : 宇宙 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

 この件、数日前からちらちらと見かけたお話だけど、たまたま火星にあったというだけで、隕石それ自体なんてのは地球上でもありふれてるよなぁなんて思ってたんだが、↓ということであったのか。なるほどなぁ。

 NASAの研究チームは「火星の大気が今より濃く落下速度が低くないと、この大きさの隕石は地面に衝突した時にバラバラになってしまう」とみている。風化の具合と合わせ、過去の火星の気候を解明するのに役立ちそうだ。