J・P・ホーガンの作品に関してつらつらとその2
昨日のエントリの誤りについてid:proto_typoさんからコメントでご指摘いただきました。ありがとうございます。記憶に頼って書くと、俺の中の熱が『プロテウス・オペレーション』『終局のエニグマ』のあたりから冷めていったこと自体が実に明らかになってしまいますね、と言い訳。
で、なんでそのあたりから熱が冷めていったのかつらつら考えるに、上手い表現にならないんだけど、世界の謎の解明というか新たな科学・技術的知見の獲得みたいな、物語のネタになるガジェットの面白さと、ストーリー上で解決すべき課題のガジェットとの上手い絡み合いかた。この2点がホーガン作品の俺的な面白さなのかな。前者が突拍子もないものであればあるほど、後者の絡み合いが密接であればあるほど良し、と。
ガジェット | ストーリー上の課題 | |
---|---|---|
星を継ぐもの | ミネルヴァとガニメアンの真実、歴史の書き換え | 月の死体の謎解き |
ガニメデの優しい巨人 | ガニメアンの歴史と社会 | ガニメアンとの交流 |
巨人たちの星 | ジェブレン人の陰謀 | ジェブレン人の陰謀阻止 |
創世記機械 | 重力物理学の新展開と工学的応用 | 東西対立の中二病的解決 |
未来の二つの顔 | AIの知性獲得過程 | 地球規模グリッドを任せられるAIの開発 |
未来からのホットライン | タウ粒子の振るまいと時空の構造 | 地球をバゴファントの脅威から救う |
断絶への航海 | ケイロン人のメンタリティ | メイフラワー二世タカ派によるケイロン侵略の阻止 |
造物主の掟 | タロイド世界の有り様 | タロイド社会の自主独立を維持 |
とまぁ、ここまではすっきりするんだけど、『プロテウス・オペレーション』や『終局のエニグマ』では、前者がヘボイ。どこにでもある並行世界とタイムトラベルとか、ソ連の宇宙島の構造とか。で、後者も、要は専制と独裁の勢力に対してどうやって自由と民主主義陣営を勝たせるか、で、すでに『巨人たちの星』『断絶への航海』『造物主の掟』で書いたことの焼き直しなのね。残念ながらこのあたりから、新鮮味が感じられなくなってきちゃったんだろうなぁ >俺。
小川一水『天冥の標 3 アウレーリア一統』(ハヤカワ文庫JA)
第3巻。ま、全体の10分の3だと思えば、まだプロローグではある。しかしクトコトが冥王斑の原因であるという認識は人類社会には広がらなかったのか。それが常識になってれば、六肢の「サル」と接触した時点で警戒しそうなもんではあるが。*1 で、1巻の
それと、舞台が23世紀半ば〜24世紀初頭なのに、技術水準は核融合炉とそのプラズマによる反動推進、一番の財産は電力生成能力(通貨を
あと、今のところ俺的に最大の謎or伏線は、1巻では「メニー・メニー・シープの真の形状」、2巻では
てなことをゴチャゴチャと次巻を読む俺用にメモってたら、小川一水スレ10 天冥の標 復活の地 第六大陸で素晴らしいサイトが紹介されてた。次巻が出たらここでお復習いせよ >俺。
- 作者: 小川一水
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/07/10
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*1:いや、それ以前に、「冥王斑で嫌がらせを人類にしかけた何ものか」についての認識があれば、人類統合政府隷下の宇宙軍主導で、「種の拡散」計画が推し進められる社会になるような気も。その認識が広まらなかった理由なんかは、「断章三」が挿入されるであろう2巻と3巻の間の時代を書いた巻待ちかな。