イタコ「口寄せ」癒やしに効果…国助成で研究 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

 はてブのコメントでも、国の無形民俗文化財津軽のイタコの習俗」の研究に国助成まではわかるけど・・・民俗学の研究としてならそれなりに有意義かもしれないが医学の研究としてやるのは流石に引くなあ、民俗学だよね?だよね?とあるが、新たな遺族支援のあり方を提案したい民間信仰を科学的に検証し、遺族支援に役立てたいって言ってるからには、単なる民俗学的な研究にとどめる気はない、自殺者遺族へのカウンセリングの一方策として、国費を投入して活用したいとしか読めん。
 まったく、マニフェストやるやる詐欺事業仕分けパフォーマンス、ホメオパシーの砂糖玉に保険適用を検討、そしてイタコの口寄せでカウンセリング、とにかく何から何まで、実効的で実があるが手間と時間とコストのかかることは何もせず、見せかけの安心感や達成感で騙くらかすだけ、という点においては一貫してる政権であるといえば、まぁ確かに一貫性だけはあるのかもしれん。自殺者を直接的に減らす方策や、そのために景気や雇用や労政についての政策をうつよりは、遺された側のカウンセリングの方が安上がりだわな。
 しかし、そういう政策的にどうこうとかいう議論以前に個人的感覚として、騙すことで人を癒すことがどこまで受け入れられるか、宗教的な勧誘などに波及しないかが問題か。個人的には故人の気持ちが都合よく捏造されることに抵抗はあるというコメントに同意。百歩譲って、正常な判断力を備えた成人が一時的な感情のゆらぎへの適応として自発的にファンタジーに浸るぶんには、愚行権の行使というか趣味の問題だろうが、イタコだの霊媒師だのが死者を騙ることを国家が公認するなんて、死者の尊厳と遺された生者の気持ち、双方に対する冒瀆以外のなにものでもない。ふざけんなよ屑どもが。

追記

 こっちのブクマこれだけ見ると、心理学的な質的研究を行うということであって、それが心理臨床なりにフィードバックされるのなら有意義なのでは、と思うけどというコメントでちょっと頭から血が下がった。あー、そう見れば……しかしもにょる。てか、それでもオカルトサイドから「お墨付き」的に利用されることへの懸念は変わらんし、またどっちにせよ、死んだ後のフォローじゃなくて、死ぬ前の制度を良くするべきだろう*1という点も同じ、ではある。

山本弘『アリスへの決別』(ハヤカワ文庫JA)

 表題作と「リトルガールふたたび」*1については……ま、なんというか、あれだ。あえて極端な状況設定を舞台にプロパガンダにすらみえる自分の主義主張全開トークを繰り広げるのもまた、『1984年』や『宇宙の戦士』から後期J・P・ホーガンを経て連綿と続くSFの伝統の一部ではあるのだな、うん。しかし、SFなんだから、「もうちょっと捻ろうよ」感は否めない。例えば同じ「特定ジャンルの表現物の単純所持規制」について書くにせよ、「それが規制されるとは現在の我々読者にはちょっと思いつかないもの」が「どういう舞台設定の下でなら規制されうるか」「その結果その世界ではどういう事態が出来するか」をもっと飛躍させられないものか。やっぱ星新一白い服の男」が、このネタでは遙かに先を行ってるよなぁ。
 あと印象に残ったのは「地獄はここに」。これはなかなかにえげつなくてGood。自覚的な「と」の人が痛い目にあうという意味では勧善懲悪で、なおかつ、サーラに出会わなかったデルがのうのうと生き延びる。「嫌な話」好きとしては大変に良作。

アリスへの決別 (ハヤカワ文庫JA)

アリスへの決別 (ハヤカワ文庫JA)

*1:確か最初に出版の告知があったときにはこれが表題だったな。てことはこの2作が本書の中核なのであろう。