時雨沢恵一『キノの旅 12―the Beautiful World』(電撃文庫)

 いつにもまして、身も蓋も容赦もないお話ぞろい。また、あとがきが普通な替わりの仕込みネタも楽しい。「賭の話」なんか見ると、こてこての繰り返しギャグ方面にも才能がありそう。おまけにいよいよ「証券編」への意欲を見せてくれてるし、さすがやなぁ、どんどんやれ。絵も良いねぇ。特に表紙の凛々しくも愁いを含んだお姿と口絵のキラキラっぷりの落差が。『ヴァルプルギスの後悔 Fire1.』の表紙とp.124にも匹敵するな。もっともこっちのは「炎上」じゃなく、ちゃんとした理由があってのことだけど。
 ところでどうでもいいことだけど、この世界が球形の惑星であることって、ひょっとして今巻で初めて確定したんだっけ? それと最後のトラック、再出演はあるのかそれとも実はこれまでの巻のどこかですでに殺り合ってたりするんだろうか、うー、未読の山を放り出して全巻読み返したくなってきた。

追記

 読み返してわかった。3巻か。最後のトラックじゃなく残り2台のほうね。7年越しの伏線回収とは、おそるべし。