小林めぐみ『回帰祭』(ハヤカワ文庫)
まず設定的には、『チグリスとユーフラテス』風味で家族内のドロドロが絡むあたりは『魔女を忘れてる』? そういやこの黒くてどろっとした風味は確かにホラー系の新井素子っぽい感じもある。で、どこで急転直下の明るい脱出行になるかと思ってたら、そう落とすか。
ところで、墜落して半壊した状態で49601人をその内部に住まわせる都市宇宙船。更にその食料を生産し1600人乗りの宇宙船を年に一隻建造し年に2000人を人工授精して里親に送り出し市民に奉仕し反逆者を矯正教育*1する中央システム、重力制御にHDP航法。これが「もうダメだ」状態になって慌ててつくった複数の避難船の一つに過ぎないって、何か、恐ろしく進んだ技術じゃなかろうか。すでに太陽系中に膨大な数のコロニーがあったり一大星間文明を築いてても不思議じゃないような。ま、そういう考証が似合う話かどうかはともかく……なんて考えながら読んでたが、これもラストでどんでん返されて目が点。そーか、そーくるか。そら確かに歪さを感じるよな。てか歪さ自体が伏線か。
あと、作者ブログから読み取れるスケジュール*2と、ハヤカワ文庫標準のレイアウトで497ページにびっしり字の詰まったボリュームの対比が凄い。元同業者の端くれとして、早川書房の編集者に心底から「お疲れ様」を言わせていただきます。
- 作者: 小林めぐみ
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2008/11/10
- メディア: 文庫
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*1:「ZAP! ZAP! ZAP!」じゃないのね。
*2:9/24脱稿、10/14修正中で著者校は手つかず、10/27校了で、11/11発売。