スズキヒサシ『山獄の獅子王―タザリア王国物語〈5〉』(電撃文庫)

「……おまえはなまじ、ぼくの過去を知っているせいで、小姑みたいになりそうだ」
「お褒めに与り光栄です」

 主役たるリネア様の出番が少ない分、ちょっとは明るい兆しが見えてギャグシーンも入る余裕が出てきたかな? 前巻で謎だったブザンソンの動機も、怪しい背後関係がでてきて、一応今のところは好材料に見えるし。ま、まだまだジグが何度もどん底に落ちるだけの仕掛けや伏線は張りまくられてるし、ここからは順風満帆で一気に成り上がり、なんてことにだけはなりそうにないけど。
 もっともいちばんの謎は、白い指輪をあそこまで大事に持ち歩いてきたあげくにヒョイッと渡しちゃう心理かもしれん。前から思ってるけど、この作者、すっ飛ばす部分はとことんすっ飛ばすよな。計算でやってるのか淡泊なのか、よく分からん部分もあるような。個人的には、魔道具使い協会とタザリアの関係なんかも地味に気になるなぁ。