凡作×2

スズキヒサシ『焔のシグナティス』(MF文庫J)

 キャラクターの捻り方とかちょっと珍しい感じ*1ではあるけど、なんかいたって普通なラブコメ学園異能バトル。わざわざ『タザリア』を書く手を止めて別レーベルに売り込んでこんなもん? よっぽど『タザリア』の展開に煮詰まりでもしたのかはたまた作者の執筆ペース以外の要因でスケジュールが遅れて手空きにでもなったか、とかそういう要らん想像に及んでしまうくらい普通。

 リネア様を筆頭とする強烈で濃ゆいキャラクターで引っ張るのとは別の方向をあえて目指したのかもしれんけど、それならそれで、せめてこよりの動機を仄めかすか、((もちろん単独任務へのこだわりではなく、この業務に就くこと自体へのほう。)) あるいは早風が霊魂の子と過去に何かあったことにすればもうちょっと盛り上がるような気がするし、エピローグに宇佐見さんをきちんと絡ませれば読後感や次巻への期待がかなり変わるんじゃないかなぁ。

涼原みなと『赤の円環』(C★NOVELSファンタジア)

 謎の不思議箱庭世界。その謎が謎のまま残されるのは良いとして、ラストの出来事が長期的に意義のある出来事になるのかそれとも目先の解決にしかならんのかもはっきりしないのが、なんとも消化不良。何でもかんでも逐一説明すりゃ良いってもんじゃないのは分かるが、せめてこの世界を作った連中が何を考えてたか、なんのためにあの仕組みを用意しておいたかについて、多少は仄めかしても罰は当たらんだろうに。設定も世界の描写もキャラも陰謀合戦も面白いんだけどなぁ、すっきりしなさ過ぎてなんとも。

 それと、本の構成には大いに難あり。巻末の地図(図面?)を見つけるまではどうしようかと思ったわ。こういうもんは巻頭に分かりやすく付けてくれんと。見つけにくいのも困るがそれ以上に、参照しようとして巻末を開く度に本文のラストが目に入りそうになってネタバレ回避にヒヤヒヤしてしまったわ。

*1:主に妹が。