葛西伸哉×2

 ……「かくもささやかな凱歌」『石のハートのアクトレス』以降、この人の商業作品はほとんど全部買って読んでるんだけど、なんか痛々しいというか辛くなってきたわ。前にもそんな気がしたことがあるが、この人、萌えラブコメに致命的に向いてないんじゃないか? いわゆる「魔改造」の典型的な失敗例。もっともこの人の場合は自分で企画書を作って複数のレーベルに売り込んだりしてるようなんで、むしろ自分で自分を開腹して改造手術してたら、鏡に映って左右逆なのをうっかり失念してて重要な神経を逆に繋いじゃった、てなところか。

『インポッシブル・ハイスクール』(MF文庫J)

 内容以前に気になって仕方ないんだけど、ことわざや故事成句を(微妙に意味が通ることもあるような形で)間違えては突っ込まれるギャグ、これ、『キノの旅』のエルメスのパクリと言われても仕方がなくはないか? *1 商業デビューから17年やってきて企画を売り込んだり専門学校の講師をやったりしてて、てことはそれなりに「この業界で何が売れてるのか」を研究してるはずで、まさか知らないことはないと思うんだが。

 内容的には、異性が苦手なのはよく分かった、恋愛に奥手なのも強引ながらまぁ一応は理解可能、しかし正義にこだわる理由が謎だ。いわゆる「正義バカ」的なキャラクターってのもそれはそれでありなのかもしれんけど、そうするとクライマックスを「正義のお説教」で盛り上げるところで、そのモチベーションがなんなのかさっぱり分からんのだよな。もっとも、盛り上がろうにも悪役の動機がしょぼすぎてどうにもならんのだが。

『恋愛撲滅隊コイスル』(ファミ通文庫)

 わはは、これは確かに「ちょっとネタが被った」とか言うレベルじゃねーな。まさに宇宙からはアイディア電波が降り注いでおり、同時に複数の人間が受信する事もあるという水準、思わず箇条書きマジックを行使してみたくなるレベル。これで発行日から推測される執筆時期が思いっきり被ってるんでなければ、そしてどっちかに「パクリ指摘厨」的なファンorアンチがついてれば、大惨事が起きてたかもしれんな。

  • ヒロインは、この世から恋愛を無くすため、怪しげな術/手段を行使してドタバタと奮闘する、小柄でお子様体型な、純粋まっすぐ君を通り越してちょっとDQN気味な性格の美少女、ドジっ子属性つき
  • 男性主人公は、以前からの憧れの人の居る高校にやっと入ったのに告白前に玉砕し、ヒロインの暴走に巻き込まれ、気がつけば周囲への迷惑を最小限に抑えるために手綱を取る羽目になる、不幸な少年
  • で、ドタバタの間に互いの感情はやがて……

*1:しかもエルメスより出来が悪い。