新人、いまいち×2

七瀬川夏吉『記憶の森のエリス ブラコン×記憶力ゼロ→大迷走』(角川スニーカー文庫)

 ??? これが賞を取った期待の新人さんのデビュー作? 何度も企画書を練り直させ編集が指導してこれ? 訳がわからん。どこが良い悪いとか好き嫌い以前に、小説としてどういうストーリーになってるのかさっぱりわからねぇ。*1 要素要素はなんか面白く、というか少なくともそこそこの水準の「良い話」を量産するに充分な材料を揃えてるようなんだが、肝心のクライマックスで主人公が常に外で待つ以外にやることがないって、何が嬉しくてこんな設定にしたんだろう?

 「記憶の森」が人間サイドからは完全にブラックボックスで、「依頼を受けた守人がその場で呪文かなんかを唱えたらポンッと実が出てくる」のと何も変わらんから、森の描写がまるまる冗長で無駄。察するに、イラストで目を引きたい→裸を出そう→自発的に脱ぐキャラじゃ性格的にちょっと→「そこへ行くには脱がなければならない」領域を出そう→でも野郎を脱がしてもつまらん→じゃあヒロインとその同種しか入れないようにしよう、ってなところかね。いっそ小説じゃなくイラストストーリーかなんかで出版すれば良かったんじゃないか?

布施文章『ノーブラッド―ツインテール襲来!』(電撃文庫)

 ほぅ、拾い上げ新人のデビュー作で露骨に「続く」ときたか。結構な自信じゃの。しかし妙に間延びした気がするな。主人公が受け身で状況に流されてばっかり過ぎだからか。これなら事件の全体像が見えてくるところまで一冊にまとめた方がテンポが良かったんじゃなかろうか。もっともそれでは詰め込みすぎの説明不足になるのが目に見えてるような気もするが。

 ところで、今月のラインナップ15冊中に吸血鬼ネタが3冊って、こういうのって編集サイドで調整したりとかはしないもんなのかしら?

*1:あと、先月の『あずけて! 時間銀行 ご利用は計画的に』とまるまるネタかぶりってのもいただけない。新人賞受賞作同士でたまたまってんならともかく、どっちもネタ出しの段階から編集が噛んでて、雑誌連載までさせてるのにこのていたらく。真面目に仕事してねぇんじゃねえか >編集者。