新人さん、いまいち×2

あさのハジメまよチキ!』(MF文庫J)

 ともかくひたすら萌え要素とラブコメ的お約束をこれでもかこれでもかとてんこ盛りにして出してくる、設定もストーリーもすべてはそのために従属する、実にこのレーベルらしい。なるほど最優秀賞を獲るわけだ。会話も文章も上手い。
 が、期待してたものじゃなかったな。MF文庫Jらしすぎて、その「らしさ」が好きな人には最高なんだろうけど、何というか、意外感とか驚きとかがゼロ。せいぜい主人公家族の暴力性以外には尖ったものも新規性も感じられず、応募時点で既にレーベルにあわせて魔改造済み、みたいな。

 俺的には、MF文庫Jの新人賞には、どちらかといえば「変なもの」を期待してたんで。((なにしろ森田季節とか葉村哲とか、あるいは先月の『ごくペン!』とかを輩出してるんだし。)) 何というか、悪い意味でこのレーベルらしすぎて、お腹いっぱいでもたれる。てか、改めて見返したら、第4回までは最優秀賞は出てなかったんだな。本作がここの新人賞始まって以来初の最優秀賞なのか、納得。

島健康『魔王様げ〜む!』(メガミ文庫)

 それなりに面白いんだが……あらすじや口絵を見て想像した内容と、オチまで含めて寸分違わないってのは……もうちょっと捻ろうよ。なまじそれなりに上手いぶん初々しさやフレッシュさに欠け、なんというか、「再来月のタマ数が足りないと編集者に泣きつかれた中堅作家が、没アイデアを拾い上げて一週間で書き上げました」的な雰囲気。ま、もしもレーベルとしてラブコメ版ハーレクインを狙うとかであれば、こういう作家さんも必要なのかもしれん。