井上雅彦[監修]『喜劇綺劇 異形コレクション 44』(光文社文庫)

 今巻はいまいちかな。怖さと笑いを両立し切れてない作品が多いような、というかホラーでもなく笑えもせずおまけにお話しとしても面白くないかんべむさしとか、なんじゃこりゃ。改めて、中島らもは鬼才だったんだなぁとしみじみ思うわ。ま、笑えるホラーと言えば友成純一インサイド・アウト」(『秘神界―現代編』)のインパクトが凄すぎて、かなり基準が厳しくなってるとは思うけど。

高井信「誤用だ! 御用だ!」

 「注釈多すぎ、くどい」と思えた自分にちょっとホッとする。「好きか嫌いか」は確かにお見事。

田中哲弥「夜なのに」

 これは綺麗な田中哲弥。そういえば「大久保町」シリーズはこっ恥ずかしくなるラブストーリーでもあるのだった。しかし冷静に時系列を追おうとするとクラクラくるな、酔いそう。

牧野修「山藤孝一の『笑っちゃだめヨ!!』」

 「笑える怖さ」ってことなら、やっぱこのくらいは徹底して欲しいもんだ。もっとも、その次のページが清水義範「名もなく貧しくみすぼらしく」ってのは、並列する効果による「嫌な笑い」を狙ったのかしら。

喜劇綺劇―異形コレクション (光文社文庫)

喜劇綺劇―異形コレクション (光文社文庫)