明月千里『月見月理解の探偵殺人』(GA文庫)

　強烈な味わいのお話。改稿を繰り返して応募したのですが、投稿直前ものに比べると、だいぶライトな感じになった問題だった部分はちゃんと修正したそうで、元々はどんな劇薬だったのかしら。
　冷静になれば、平凡でおとなしい(ように見える)男子高校生の日常へ、ある日突然、異能持ちで態度のでかい女の子が転がり込んで、さんざん引っかき回したあげくに最終的に、最初よりほんのちょっとだけ変わった状態に落ちつく話、でしかないんだが、その骨格にまぶされた毒が濃ゆい濃ゆい。それと、毒舌で外道なヒロインが最後までそのまま、それに下手な挑み方をしたものはこてんぱんに叩きのめされておしまい、ってのもいいね。最近読んだHJ文庫の毒舌ヒロインものでは、結局最後に「実はいい人の強がり」にしてしまってあっさり良い話に落としてたけど、それって「人間の複雑な内面」を描いてるようで、実はよくあるパターンに落としてるだけなんだよな。更正した綺麗なガハラさんなんて台詞の中にしか出番がなくなるくらいにしといたほうがよっぽど好みだ。

月見月理解の探偵殺人 (GA文庫)