西尾維新『難民探偵』(講談社)

 現実世界と作品世界、作者と作中人物は別物だと分かっていても、「『累計百万部突破!』という、本屋でよく見かけるあの帯が、言うほど大したことじゃないように思えるようになったときに、作家としての俺は死んだんじゃないかと思いますよ」って、凄い台詞だよなぁ。下世話ながら、ここを読んだ同業者の感想が知りたくて堪らん。
 作品そのものの中身は……なんか普通に普通のミステリだよ。あれ、もっと変なモノを期待してたんだが。いや、なんの奇妙な体験も成長も大きな世界との関わりも変化もなく、ポンッと放り出しておしまい、ってのが変なのか。読者に何かを残すとかそういうことは一切無しに、人が殺されてその謎を登場人物が解いて、はいおしまい、ってところが。ミステリ小説としては至って普通だけどこの作者の作品としては大いに変なのか。

難民探偵 (100周年書き下ろし)

難民探偵 (100周年書き下ろし)