入江君人『神さまのいない日曜日』(富士見ファンタジア文庫)

「泣きますか……」
「たぶんな」
「そうですか……泣いちゃいますか……」
「泣いちゃいはしない」
「……なんかそれ違うんですか?」
「ニュアンスだ。年がら年中垂れ流しのお前の涙と一緒にするな」

 ここだけこうして取り出しても良い雰囲気だけど、自発的に意識的にしか涙を出さないよ、って、ハードボイルドだねぇ。で、ハードボイルドの格好つけ兄ちゃんが、最後に一つだけ心底からの願いを神様にかなえられました、めでたしめでたし、であるのだろうなぁ、このお話。いやぁ、上手いわ。絶賛されて大賞を受賞するだけのことはある。構成的にも、ちょうどpp.236-239あたりまで進んだところですべての伏線が繋がってオチが予想され、*1 そしてその通りの切ないエンディング。見事だ。
 ドラマガの短編もなかなか。それ単体としても切ない系の実に良い話だし、その2年後に村がどうなるか知って読むと一層味わいが増してくる。
 しかしこれも2巻目の予定あり、とな? 『シュガーダーク』のときも思ったけど、*2 これに続きって……どうか蛇足にだけはなりませんように。

神さまのいない日曜日 (富士見ファンタジア文庫)

神さまのいない日曜日 (富士見ファンタジア文庫)

*1:もっとも、てことはこれよりかなり早くに伏線のつながりとオチを読み取れる俺より勘の鋭い読者にとっては、物足りないかも知れんなぁ。

*2:そういや舞台設定や主人公の造形も被るものがあるな。墓場つながりって、謎のシンクロニシティだ。