矢野俊策『ダブルクロス01 ファースト+ぺイン』(富士見ファンタジア文庫)

 平凡というかどこにでもある一応は水準作の異能バトルというか、ダブルクロスの設定を「自動ラノベ作成機」に放り込んで出力されました、みたいな。暴走癖のないプレイヤーがサンプルキャラクターをPCにし絶対に期待値どおりの目が出るダイスを使ったセッションをリプレイにしたらこんな感じだろうか。ゲームシステムをデザインしキャンペーンまとめ役としてシナリオを組み上げふさわしいプレイヤーを集めGMとしてセッションを捌きそれを「読んで面白いリプレイ」にまとめ上げる才能と、小説を書く資質ってのは、また別物なのだろうなぁ。
 それとこれは小説そのものの問題とは別に、イラストがひどい。上手い下手以前に本文との整合性がガタガタ。何十ページも話が進んでからさらっと描写されたとかならともかく、本編に登場したすぐ次のページで髪と同じ色の瞳とある人物のカラーイラストがこれ? 服装も、なんで同じ人物が同じ小説の同じシーンを描いて、カラーとp.261のような違いが出るんだ? 編集者かイラストレーターのどちらかについては、まともに金を取れる仕事の水準に達してないと言わざるを得ん。
 ところでワーディングが化学物質の作用って、前からある設定だっけ? 質量もエネルギーも保存せず重力から生化学反応まであらゆる力と作用を自在に操るレネゲイドウイルスにしては、またえらく現実的な原理だ。謎のオーラかメタフィールドみたいなものかと思ってた。まさか耐NBC装備的なものでワーディングを無効にする、某国の耐オーヴァード特殊機械化部隊でも出てくる前振りだったりして。