星野彼方『クロス・リンク〜残響少女』(HJ文庫)

 うーむ、不思議なものを読んだ気分。なんというか、読後感的にこれに賞を出した上で改稿させてまで出版させた編集部の気分がよくわかるんだけど、いざ誉めようとすると誉めどころがない、みたいな。会話と情感で話を進めていく割に、序盤で延々と展開される交渉に関する生理学的な蘊蓄を把握してないと肝心のオチに説得力が出ないというアンバランスな構成や、そうやってもっともらしく学術的裏付けのあるようなネタの展開をしながら、肝心の「異星人に精神を乗っ取られた状態で生理学的反応は同一の発現をするのか」についてはスルーしてるおおざっぱさ、何よりも全体に漂うお説教感というか抹香臭さ。悪口はなんぼでも浮かぶんだけどなぁ。

クロス・リンク~残響少女 (HJ文庫)

クロス・リンク~残響少女 (HJ文庫)