本岡冬成『黄昏世界の絶対逃走』(ガガガ文庫)

 ふむ、妙な世界だ。全然設定も雰囲気も違うんだけど、冒頭のラジオの予報アナウンスからなぜかULTRASEVEN Xを連想してしまって、街ですれ違うモブの表情が全部あの世界の陰鬱とした光景で再生されてきた。*1
 人類の黄昏を作り出したものの名が「黄昏」ってのは、よくできてるような安直で不協和なような、そういうどこかアンバランスで陰鬱な世界らしいキャラの血の温度の低さもいい雰囲気。途中で出会った人たちともそれっきり、結局本当に幼なじみなのかどうかも、そもそも当人たちに深く追及する気がない。で、そうやって淡々と寒々しいから、クライマックスが輝くんだな。そういうコントラストをつけるのが作劇の基本といえばそうなんだろうけど、上手いもんだ。

黄昏世界の絶対逃走 (ガガガ文庫)

黄昏世界の絶対逃走 (ガガガ文庫)

*1:ついでに「黒ずくめのエージェント」も一致してたり。まぁでもこの世界には、並行世界からの救世主なんか現れず、それどころかこの世界が滅ばずに済む最後の唯一の望みをカラスの本編での行為が潰してしまったのかもしれぬ。