川口士『桐野くんには彼女がいない!?』(一迅社文庫)

 なんというか、『リーナ』と『書庫』の合間の息抜きかストレス解消に楽しんで書いたんだろうなぁ、というのが実によく伝わってくるな。まさに地味だ地味だ言われて、たまにははっちゃけたことしようとして明後日の方に全力投球してしまったという紹介の通り。これを同人出版とかサイトへの掲載でなく商業出版で出すと決断した一迅社すげぇ。しかしまぁ、どえらく作風を変えてくるもんで、器用だなぁ。これ、作者名を隠して渡されたら、この人の作品だとは思わんだろうな。これはこれで面白いんだけど、作者買いした読者としては微妙な気分ではある。
 あと、「メタ発言」が微妙に気になるな。メタ発言をするキャラが一人いて周りがそれについて途方にくれるとかならアクセントとしてありだし、完全にギャグな作品ならもちろん何の問題もなくOKというかむしろそういうの好きなんだが、こういう雰囲気の作品で主人公がメタ発言を「メタである」と認識してるとなると、うーん、続刊なりでそれをキーとした展開を見せてでもくれないと、ちょいと承伏しがたいかも。
 ま、生徒会長のキャラがそれらを補って余りある程度には美味しかったんで、出れば買う予定ではある。

桐野くんには彼女がいない!? (一迅社文庫 か 3-3)

桐野くんには彼女がいない!? (一迅社文庫 か 3-3)