中村融[編]『宇宙開発SF傑作選 ワイオミング生まれの宇宙飛行士』(ハヤカワ文庫SF)

ウィリアム・バートン「サターン時代」

 ありえたかもしれない未来。確かに、現在のソユーズ(ロケットと宇宙船)並みにアポロとサターンが改良と熟成を重ねてたらどうなってたか、というのは魅力的な歴史のifだよなぁ。もっとも本作の設定であれば、民主党政権が続いた=レーガン軍拡のプレッシャーの不在によるソ連orロシアの動向についても、もっと外挿して欲しかった気が。あれだけしか触れられないのはちょいと違和感。もっともそれじゃ短編のボリュームには収まらない気もするが。

アーサー・C・クラーク&スティーヴン・バクスター電送(ワイア)連続体」

 古き良き「超技術によって変貌する社会と、それに翻弄される人々」を描くお話し。宇宙船が、新しい土地へ最初の1回だけ受信機を設置しに行く機械、としての意義しか持たなくなるお話しが「宇宙開発SF傑作選」の一篇だってのはなかなかに味わい深い。しかし英語圏ネイティブの人の感覚では、無線伝送が主であってもWireで良いのか。

エリック・チョイ「献身」

 ボーイスカウトでアメフト選手、アメリカンマッチョ万歳!!!

アダム=トロイ・カストロ&ジェリイ・オルション「ワイオミング生まれの宇宙飛行士」

 ええ話。感動の名作扱いされるのは非常によく分かるんだけど、なんかイマイチのめり込めず、背景のアメリカ社会やらタブロイド紙の見出しに違和感。ひょっとして、まさかいくら何でもここまで社会全体の科学リテラシーが劣化するなんてあり得ない、と心のどこかで信じてるのか >俺。

ワイオミング生まれの宇宙飛行士 宇宙開発SF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)

ワイオミング生まれの宇宙飛行士 宇宙開発SF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)