本田誠『空色パンデミック 3』(ファミ通文庫)

 お見事。上手い。良くまぁこんな構成を思いついて、かつそれを読者が混乱しないお話しに仕立て上げるもんだ。まったく、しみじみややこしいお話しで、ましてや空想病の産物と人為的な策略の結果が入り交じるとなると、もう、考えすぎたら、負け。ということで、こうやってお話しの構造が気になって気になって仕方がないこと自体が、俺が作者の術中に嵌って負けてしまっている、ということなのであろう。故に、以前読者に「状況開始」と「状況終了」を 示すヒントをいれておかないと「それはないだろ。」といわれるだろうという意見に同意したのは撤回。どこが境界線なのか作中人物にも読者にもさっぱり分からない不安とそれがもたらす恐怖があってこそ、クライマックスでエイヤっと割り切って前へ進むことを選んだことのカタルシスが生きるんだな。
 緩急の付け方も上手いよね。1巻目から張り巡らせてた伏線を律儀かつ意表を突きながら回収していくかと思えば、重要に見えるポイントが「だってキャストも人間だし」で流されたり。↓の感想に非常に同意。

いやあ三巻は凄かったな。
名作を飛び越えて怪作の域にある

 でまぁ、そういう構造とか種明かしのお話しはあっちにおいとくとして、今巻では、可愛くない陰謀を巡らす人の描写の量が増えたぶん、可愛い女性陣の描写が減ってるのがちょいと不満ではあるな。その辺はFBOnlineの短編で補充しろ、ということかね。が、そのぶんブレずに格好いい森崎君の株はグッと上がるのであった。ええ奴や、ほんま。

空色パンデミック3 (ファミ通文庫)

空色パンデミック3 (ファミ通文庫)