茅田砂胡『クラッシュ・ブレイズ ファロットの休日』(C★NOVELS Fantasia)

 あああ、また黒の人の占いであらゆる情報がいとも簡単に手に入る展開だよ。その展開自体も安直だし、リィやシェラならともかくレティやヴァッツやケリー*1がひょいひょいとルゥを頼るシーンが出てくるたび、「あの頃の彼らはどこへいっちゃったんだ」感でいっぱい。
 特に後半の「ヴァンツァーの場合」が、ああ、ヴァッツも十数冊をかけてようやくこの世界に落ちつくんだなぁ、としみじみする実に良くできたおもしろい良い話なんで、↑みたいな点が惜しい。てか、これ、一冊に二編にせずにそれぞれのお話に一冊かけて紙幅に余裕を持たせれば、占いに頼らなくても無理なく情報収集させられたんじゃないの?*2 なんか、シリーズ終了だの漢字人名の新作だのの事情で、無理矢理詰め込んだんじゃなかろうかしら。せっかくレティとヴァッツが独立した人格としてこの世界の地面に足をつけはじめる良い話なだけに、そして金銀が主役の話と違って押しつけがまさを感じずに読めるだけに、じっくりと、かつ、ルゥに頼らずにお話しを進めて欲しかったなぁ。

*1:今巻じゃないけど

*2:あるいはせめてこれまでの話の中で面識のできた官憲を上手く使うとか