瑞智士記『星刻の竜騎士 II』(MF文庫J)

 シルヴィアちゃん覚醒編。するってえと、めざすところは騎士王とその近衛筆頭、ですかね。出来映えは至って「普通に面白い」。この作者にしては今ひとつ黒いものが見えてこないのが物足りないと言えば物足りないが、ま、今巻はシリーズ展開に向けた設定追加と説明の巻で、それぞれに個性的で魅力的なキャラを愛でてればOK、な気はする。それにしても、その都度相手の戦法に対して最適な装備がぎりぎりのタイミングで出てくるって、実になんというか、ヒーローのために特化した設定だよなぁ。

星刻の竜騎士 (2) (MF文庫J)

星刻の竜騎士 (2) (MF文庫J)

JAXA|準天頂衛星初号機「みちびき」の準天頂軌道投入について

 おめでとうございます。しかし、いやもちろんトラブルを望んでるわけじゃないんですが、もうなんか、「順調すぎて恐い」世界だな。

大森望[編]『時間SF傑作選 ここがウィネトカなら、きみはジュディ』(ハヤカワ文庫SF)

 どれも面白い、さすがは国も時代も限定せずに集めたベストセレクション、と思いつつ微妙に読後に不満が残る。何でなのか考えて思い当たったのが、ハードSF的切り口の作品が一つも入ってないこと。そうか、タイムトラベルなり過去への通信なり記憶だけは残る時間ループなりを真っ当な現代科学と矛盾しないように組み立てようとすると、その仕組みの描写だけで短編の尺には収まり切らんのだな。で、そのぶん、ラブストーリーや良い話や馬鹿SFの割合が増える、と。
 いやもちろん、ラブストーリーも良い話も嫌いじゃないんだが、ハードと馬鹿SFがより好きな読者としては、本書のベストは「世界の終わりを見にいったとき」と「昨日は月曜日だった」、次点で「夕方、はやく」かな。

ここがウィネトカなら、きみはジュディ 時間SF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)

ここがウィネトカなら、きみはジュディ 時間SF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)

比嘉智康『神明解ろーどぐらす 3』(MF文庫J)

「『すまねえ、おれはその話』……のあとは、なにかいいたいことが?」
「すまねえ、おれはその話……信じんのに時間がちょっとばかしかかっちまった*1

 ああ、十勝が実にいい男だ。そして目次の各話タイトルと第五話までの流れからは、なにかまるでハッピーエンドっぽいものを想像してしまってたが、いよいよこの作者らしい怪しげなものが首をもたげてきた!!! そーか、エア友だちだと思ってたらそういう方向から来たか。で、ドロドロな雰囲気になりそうなところ、p.261のさきっぽがいい味を出してくれて素敵。さぁ、とうとう本筋のストーリーがはじまってしまった。この先何がどうなることやら、実に楽しみだ。ま、なんにせよ、どんなに紆余曲折があろうとも、十勝っちゃんなら何とかしてくれるに違いない。ギャルゴさんに並び立ちうるいい男だもの。

神明解ろーどぐらす 3 (MF文庫J)

神明解ろーどぐらす 3 (MF文庫J)

*1:この先を引用するとネタバレになりかねないのでぶつ切り。

井上雅彦[監修]『異形コレクション 46 Fの肖像―フランケンシュタインの幻想たち』(光文社文庫)

上田早夕里「完全なる脳髄」

 今巻ではこれがベストかな。このテーマにはやはり、作られた側視点のほうが似合う気がする。

小林泰三「ショグゴス」

 この作者らしい「嫌な馬鹿話」。オチのスペルを思いつくのにかけた時間と、それ以外の全部を執筆するのにかかった時間、どっちが長いんだろう?

西村悠『秋津楓はアたらない』(一迅社文庫)

 第三話の落とし方がいい雰囲気。「前向きに台無し」とでも言うか。まぁ、なんか微妙に時代背景がよく分からん気もするが、そもそもお話し全体がいつの話と明言してるわけでもなし。で、次のお話しで全体の構図がガラッとひっくり返る。上手いねぇ。今どきの男性一名+複数の女性キャラなラノベにしては珍しく積極的かつクレバー過ぎと思ってたら、なるほど、ハーレムの主ではなく狂言回し役であったか。

秋津楓はアたらない! (一迅社文庫)

秋津楓はアたらない! (一迅社文庫)