大森望[編]『時間SF傑作選 ここがウィネトカなら、きみはジュディ』(ハヤカワ文庫SF)

 どれも面白い、さすがは国も時代も限定せずに集めたベストセレクション、と思いつつ微妙に読後に不満が残る。何でなのか考えて思い当たったのが、ハードSF的切り口の作品が一つも入ってないこと。そうか、タイムトラベルなり過去への通信なり記憶だけは残る時間ループなりを真っ当な現代科学と矛盾しないように組み立てようとすると、その仕組みの描写だけで短編の尺には収まり切らんのだな。で、そのぶん、ラブストーリーや良い話や馬鹿SFの割合が増える、と。
 いやもちろん、ラブストーリーも良い話も嫌いじゃないんだが、ハードと馬鹿SFがより好きな読者としては、本書のベストは「世界の終わりを見にいったとき」と「昨日は月曜日だった」、次点で「夕方、はやく」かな。

ここがウィネトカなら、きみはジュディ 時間SF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)

ここがウィネトカなら、きみはジュディ 時間SF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)