[間歇日記]世界Aの始末書: UFOは北から来るの?

日本の現行法では(宇宙人が攻めてくることを想定した法を持つ国があるかどうか知らないが)、地球外からやってきた飛行物体が発した未知の光線が国会議事堂を瞬時に蒸発させたとしても、それは“自然災害”としか解釈しようがないだろう。よって自衛隊は、地震や台風に対するのとまったく同じように宇宙からの侵略者に立ち向かうことになる……はずだ?

 確かに、実際にそういう事態になったとしたら、そういう法解釈にならざるを得ないのかもしれないな。しかし相手が地球外飛行物体にせよ怪獣にせよ、地震や台風に対するのとまったく同じように立ち向かわねばならないとなると、とりわけ我が国の自衛隊に関しては、武器の携行・使用に関する制約が大きすぎて、なかなか大変だろう。
 形式的には災害派遣国民保護等派遣だろうけど、前者ならそもそも護身の範囲を超えた武器の携行自体許されないんじゃなかろうか。*1 
 後者では自衛官の権限は警察官職務執行法に準ずるそうなんで、犯人の逮捕若しくは逃走の防止、自己若しくは他人に対する防護又は公務執行に対する抵抗の抑止のため必要であると認める相当な理由のある場合においては、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度にあてはまれば攻撃できることになる。とはいえ地球外飛行物体なり怪獣なりの行動が刑法の取り締まり対象になる*2と即断できるとは思えないんで、自己若しくは他人に対する防護又は公務執行に対する抵抗の抑止のための範囲に限定されることになる、つまり相手を倒すための攻撃は無理だろう。
 ということで敵対的な地球外飛行物体や怪獣の確実な排除を自衛隊に望むのであれば、防衛出動海上警備行動*3を命じるしかないんじゃないんだろうか。

追記:本日のリンク元を見てると、ガメラ医師のBlog ガメラ:回転ジェットはUFOか? 2007/12 [Blog感想編]昨日の日記にリンクいただいてました。

 ありがとうございます。やはりこうして妄想をいろいろ募らせてみると、「わが国に対する急迫不正な武力攻撃」として自衛隊に防衛出動を命じたガメラ世界の内閣は、我らが現実世界を含め他に比して危機管理の観点からは一足の長があったことになりましょうね。*4

さらに追記

 ↑で、自衛隊の行動の根拠は防衛出動がベストっぽいって考えに至ったんだが、侵略宇宙人やその道具な怪獣はともかく、いわゆる「大きな動物」に過ぎない怪獣の場合、*5 つまり非常識なサイズや危険な特殊能力を持っていたとしても攻撃の「意図」や「目的」を持たず、自然の本能にしたがっているだけの場合、その活動は防衛出動の必要条件である武力攻撃事態に該当するんだろうか。
 なにしろこの国では、敵対的な意図を隠そうとしない国家が弾道ミサイルを発射しても「一発だけなら誤射かもしれない」とされる可能性があるのだ。「相手が攻撃の意図を持っていると確認できない限りは武力攻撃事態に該当しない」とか言い出す野党やマスコミが出てきそうな気はするし、ひょっとするとMM7.3の大怪獣が5:46に神戸に上陸しても、社○党首班が務める連立政権の首相が「なにぶん初めてのことでございますし、まだ武力攻撃であるとは断定できかねます」とかモタモタ寝言をかましたあげく、10:15になってやっと限定的な災害派遣出動命令を出す、なんてアホな事態も起きかねない。*6
 怪獣災害に対して確実に自衛隊に対処してもらいたいと思ったら、案外、この方針に基づく立法を粛々と進めるのが早道なのかもしれないな。

もひとつ追記:時事ドットコム:ゴジラへの対処、研究していた=自衛隊出動、武器使用も可能−防衛省

 ぐぁ、ネタがかぶった。まさかマジだったとは……

*1:いや、護身用ですらOKなんだろうか? ざっとググった範囲ではよく分からんかった。

*2:逮捕が必要になるor逃走を阻止しなければならない、と判断するにはその必要があるだろう。

*3:もちろんこちらは海の怪獣か、海面上をぷかぷか移動するマヌケな円盤しか対象にできそうにないですが。アイアンロックスやサロメ星人の円盤に海上警備行動で対処するのは難しいだろうなぁ。

*4:カメが存在しないというパラレルワールドであることが内閣の判断に差違を引き起こしてたりは……してると面白いんだけど。

*5:初代ゴジラはもちろん、ウルトラシリーズのほとんどの「地球怪獣」が該当しますね。平成ギャオスも、遺伝子操作して作り出した者の意図はともかく、ギャオス自体は「人類の天敵」としての本能にしたがってるだけなんで、これに該当しそう。

*6:google:阪神大虐殺