赤松中学『アストロノト! 2』(MF文庫J)

 いいね、うん、これは良いものだ。考証オタの気のあるSF者としては多少引っかからんでもないけど、*1 いわゆる「世界系」より、ノトみたいな「自分や身内のために頑張ったら、ついでに世界も救っちゃった」奴のほうが、読んでて性に合うなぁ。それと、「あれ、これで解決の筈がない、さらなる危機の種はどこだ」と思ったら、まさか産むとは。やられました、うまい。
 ところでそういいつつSF者として妄想を巡らすと、実はこの世界に魔法があるのは必然だよなぁ、と思う。旧文明崩壊後に改めて宇宙開発ができるレベルにまで文明が発展するには、魔法が必須なのだ。動力が人畜と簡便な水力・風力のみ、燃料が木材のみ、構造材料が石材と煉瓦のみ、という条件で、現在の地球レベルに採掘されまくった残り滓な惑星に文明を興そうとしても、このエントリにあるように、まず不可能だろう。いったん技術を失ったら、地質学的なインターバルを挟まない限り、*2 化石燃料や高品位な鉱石を手に入れる手段が無くなるってことだ。*3
 あるいは旧文明崩壊に超磁力兵器が関わっていれば、現在の我々によって掘り尽くされた陸地が沈み、手つかずの海底が隆起してくることで何とかなるのかもしれないけど、それだと旧文明の遺産を発掘したりはできないだろうな。むしろ亜人の存在なんかを考えると、旧文明の崩壊には魔法が密接に関わってるのかもしれない。黒龍(デロン)なんていかにもそれっぽいし。*4

アストロノト!〈2〉 (MF文庫J)

アストロノト!〈2〉 (MF文庫J)

*1:どんな質量のものがぶつかれば自転を止められるの、とはどうしても思ってしまった。

*2:ホモ・サピエンスの形質がそれほど大きく変化せず、完全に朽ち果ててないクルマが発掘されるってことは、せいぜい数千年だろう。

*3:ひょっとすると金属は、発掘された旧文明の遺物を鋳つぶせば何とかなるかもしれない。

*4:と、これではシャドウランになってしまうか。