橘公司『蒼穹のカルマ 1』(富士見ファンタジア文庫)

 いかんな、宣伝に騙されるところだった。紹介サイトやら帯の「あなたのような人間がいるから……」とかいう煽り文句やらからでは、ありきたりのシリアスっぽい戦記風の香りしか感じられず、危うく買わずに済ますところだったじゃないか。
 口絵の上司っぽい人の台詞であれっと思い、Case-02の途中ぐらいから、まさかこういう展開に行くのか、と恐れたまさにその方向へ行ってくれて大爆笑。いいねぇ。さすが『スレイヤーズ』からブレイクしたレーベルの受賞作だけのことはある。読み終わって振り返るに、受賞時点のタイトルからの変更も、↑の宣伝も、正に俺のようなのに誤認させて釣る策略に思えてきた。お見事。
 さて、次は文化祭かな、それとも運動会かな。第百八形態まであるくせに、第三形態であっさり妥協を申し入れる可愛いヘタレ魔王には出番はあるのか。ドラマガの短編を見る限りはネタ自体はいろいろ貯めてそう。「同じパターンばっかり」といわれないくらいに引き出しの多い作者さんだと良いなぁ。

蒼穹のカルマ1 (富士見ファンタジア文庫)

蒼穹のカルマ1 (富士見ファンタジア文庫)