犬村小六『とある飛空士への恋歌』(ガガガ文庫)

 上手いなぁ。話としては思いっきり序章なんだけど、雰囲気と設定だけで一冊読ませて次を待ち遠しくさせてくれるわ。*1 今回は『追憶』みたいに「皇女様はこんなにきれい」的な描写が鼻についたりもしないし。*2 雲と自転車のシーンなんか、「SFは画だねぇ」という名言を思い出してみたり。
 しかし国名も歴史上の出来事*3も飛空機のデザイン*4も別物で、共通点は大瀑布と水素電池ぐらい? これからの移動先にレヴァームとか天ツ上があるのかしら。イスラが浮く岩でできてるとか浮く岩の上なのに1G環境で高度2000mだけど気圧は誰も気にしてなさそうとか風を操るとか、やっぱあんまり考証に頭を悩ましたら負けなのかしら。ウィルス感染で進化した特進種が練気を操ったりする作者さんだし、ま、いっか。
 それにしても今回の「ガ報」で悟った。世の中には折り込みで平然とネタバレする編集者がいるのだということを。

とある飛空士への恋歌 (ガガガ文庫)

とある飛空士への恋歌 (ガガガ文庫)

*1:と誉めつつも、『追憶』の実績なしにこれを出したらさすがに一巻打ち切りだろうな。その意味ではまさに「追憶が売れたおかげで恋歌が出せる」んだろう。

*2:しかし『追憶』の時点で既に『レヴィアタン』3冊を出してて、商業出版デビューってわけじゃないんだよな。だとするとStarChartLog - 『とある飛空士への恋歌』は「『とある飛空士への追憶』の続編」ではないの考察が当たりなのかも。

*3:50年前の大戦?

*4:オスプレイっぽい描写だし、海水取り込み機構も無さそうな。