瑞智士記『リビングデッド・ファスナー・ロック』(ガガガ文庫)

 闇に取り憑かれ悪を為す不死者たちを、正義の殺戮者”血祭御前”が斬って斬って斬りまくる!という紹介を読んで、思わず『クロス・ザ・スレイヤー』*1を思い出すおっさん読者。
 序盤〜中盤の、何が起きてて誰が敵か味方か、それどころかそもそも誰が主役やねん、という状態が、設定のおどろおどろしさと相まってなかなかに良い味。そして↓なんかがめちゃめちゃ格好良くてGood。

「お前に俺は倒せない。それが自然の摂理だからだ」
「摂理? 笑わせんじゃないわよ」
「あたしたちは生まれつき、大地から拒絶された存在なのよ!」
「自然なんて知ったことじゃないわ!」

 しかしまぁ、気持ち良いくらい主役も主役の目標とする人も物語のキーも女性だね。『戦場のライラプス』もそうだったけど、男どもは実力のあるキャラは敵方か、味方なら前に出ずにせいぜい助言だけする役、あとは守られたり掠われたり手下だったり下僕だったり、ヘタレばっかでやがる。このジャンルでたぶん最も多いパターンと思われるティーンエイジ男性の成長物語を、何が何でもやらないという誓いでも立ててるのかしら。あと、最後のパワーアップ、ちょっと伏線が足りないんじゃぁなかろうか、とは思わざるを得ない気がする。

*1:Wikipediaの作品一覧からも忘れ去られてるのが悲しい。