西村悠『読書の時間よ、芝村くん!』(一迅社文庫)

 うん、面白い。『二四〇九階の彼女』『幻想症候群』とはずいぶんと趣を変えてきてるみたいだけど、
なんというか、どこかおっとりとした雰囲気がベースにあるような味わい。滅びゆく世界とか将来のなさそうな世界とかじゃなく普通の世界で、冒険活劇を通じて成長を遂げる、ちょっとラブコメ風味も入った王道のお話って、この作者としてはこれが初めてになるのか。考えてみれば珍しいタイプかもしれん。
 あらすじを見たときには文学少女のキャラクターが先達と被るかと思ったけど、案外そうでもないな。あちらは主に登場人物の心情に浸るタイプでこちらはどちらかというと舞台やストーリーに嵌るタイプ。イメージが被るのは胸のサイズぐらいか。*1 個人的な趣味としては、物語中のキャラ配置とは別に、芝村くんには狂言回しかバックアップクルーか囚われのお姫様をやってもらって、女性陣にブイブイやってもらうほうを希望。てか、春奈と夏耶って、あと二人、秋と冬の名の女性がでてくる伏線ですよね?
 ところで、マビノギが寄生したのが図書館や彼らの身近に蔵書のない物語世界だとどうなるのかしら。積層図書館の組織力とやらで何とかなるのか、はたまた古書店や図書館をはしごする羽目になるのか、初版5000部増刷なし1巻打ち切りのマイナーラノベを探して彷徨うお笑い短編も良いかもしれない。

読書の時間よ、芝村くん! (一迅社文庫 に 2-2)

読書の時間よ、芝村くん! (一迅社文庫 に 2-2)

*1:イラストではとてもそうは見えんが。