山口幸三郎『神のまにまに!〜カグツチ様の神芝居〜』(電撃文庫)

 面白い。第2巻に向けて動いていますとのことで、とりあえずは買い。が、説明パートの固さが……受賞後それなりに改稿したらしいけど、もうちょいこなれるだけでグッと読みやすく面白くなるだろうなぁ。というか『電撃文庫MAGAZINE』の短編は、短編だからか先に長篇を読んでることを想定してか説明パートがほとんどなく、かなり読みやすかった。こっちのほうが向いてそう。そうそう大変身しての大ネタも使えんだろうし、八百万もいるんだから短編一つごとに数柱ずつご出演願っても、当面品切れの心配はないだろうし。
 しかし、あえて社会人主人公を持ってきたのが珍しい。余人を持って代え難い異能故、本人の意図とは無関係にややこしい事態に巻き込まれていく、というお話であれば、学生を主人公にしてもそれなりに作れると思うんだけど、本題の神様について大嘘をついてるぶん、「それ、学生の行動力や世間慣れじゃないやろ」というところでは嘘をつきたくない、という現れなのかな? その割には日本国以外存在しないような世界に違和感を感じないではないんだけど、さて、吉と出るか凶と出るか。学生というか未成年主人公にはさせられないようなネタを自由に扱えるメリットと、主要購買層の共感を得にくくなるデメリット、どうなることやら。