河野裕『サクラダリセット CAT, GHOST and REVOLUTION SUNDAY』(角川スニーカー文庫)

 あちこちで激賞されてるんで気になって読んでみた。うん、これは良いね。雰囲気とかもそうなんだけど、全ピースが最後にカチッと嵌る感じが。綺麗に嵌りすぎて次巻が心配になるくらい。今巻の話に最適化されすぎてて他の話に馴染まないんじゃないか、と。しかし、綺麗な雰囲気でまとまってるんで「白」タイプの人だと誤解しそうになるけど、ラストの作戦は最低だよな。実はこの作者、本性はかなり「黒」なんじゃなかろうか。なんせ乙一お勧めだしなぁ。てか黒いものもぜひとも書いて欲しい。マジで怖いものができてきそうだ。
 そういや乙一のデビュー作『夏と花火と私の死体』を手に取ったきっかけは帯の栗本薫の推薦文だったっけ。いまや、かたや温帯化した未完の女王として逝ってしまい、かたやネタ切れのあげく再生工場の原料を募集しながらそこからの製品すら産出されず。あぁ、どっちもあの頃は輝いていたのよねぇ、*1 とおっさんモードに入ってしまった。
 ここまで書いてから『the Sneaker』の短編を読んでちょっとびっくり。ピースが嵌って白いって、なんというシンクロニシティ。こっちもなかなかGoodでした。次号にも掲載される*2とのことなんで、そっちも期待。

*1:いや、1996年の著作一覧を見ると、解脱したいまから思えば温帯化はそれなりに進んでいた時期か。

*2:河野裕は、今月末発売の「ザ・スニーカー8月号」でも短編を掲載予定(『サクラダリセット』とは別の短編です。死神の少女が出てきます)。