葉村哲『天川天音の否定公式』(MF文庫J)

 雪道君の鈍感さが凄まじすぎる。そらこんだけ鈍い奴なら、ピンク色の髪をした日本人を目の前にしても驚くまいよ。彼がそんな繊細さと無縁なのも、否定公式や虚構式が我が物顔に振る舞うのも、全てはこの世界を覆うリアリティ低下フィールドの仕業に違いない。
 てな感じで、あらすじからてっきり「『ふたりぼっち』の人もついに学園ラブコメ異能バトルに魔改造されたか」「生活能力のない闘うヒロインだけならありきたりだけど、『汚部屋ヒロイン』はさすがに新しいかも」と思って読んでたら、第四章当たりから変な世界になってきたな。で、正直、これ一巻だけでは何が何やらわけがわからないという点ではX(エクサ)の魔王』と同レベルなんだけど、なんかエラく印象が違う。本編途中の天音が超常現象云々を語るシーン、実は意味を理解しなくても何一つ問題はないという親切設計の賜物だろうか。前作に引き続き本作も、細かいことは気にせず神話だと思って流され味わえばいいのかもしれん。微妙に西尾維新っぽさを感じるようになったのが気になるが……

天川天音の否定公式 (MF文庫J は 6-4)

天川天音の否定公式 (MF文庫J は 6-4)