梅村崇『時に消えたキミと歪曲の十日間―デイ・トリッパー』(徳間デュアル文庫)

 面白い、後味も良い、情報の読者への明かし方もよくできてる。ちょいと主人公は考えなさすぎだとは思うが、設定的にも対人関係的にも前例のない状況に放り込まれた高校生ならむしろこのくらいの方がリアルな気もする。が……SF成分はフレーバー程度の青春ミステリとして読めばいいんだろうけど、気になってしゃーないのぅ。
 人類との共通の起源を示唆されていない異世界人が見た目は人間そっくりで(でも意図的に外形を変えたにしては通常のホモサピエンスにあり得ない色彩や器官があって)、それっぽい用語で語られる時空の構造の変動はなぜか地球の公転周期に同期して発生する、主人公が徹夜したら何が起こるんだ? この話の設定だと。うーむ、SFとしてこれで通じるのは70年代までだよなぁ。こういうなまじもっともらしい疑似科学なタームを使った設定にして穴だらけになるよりは、「ラベンダーの香りを嗅ぐと時を越える主人公と未来人」で良かったんじゃなかろうか。
 あとヒロインのイラストはちょっと……目の下の隈を強調してるとしか思えんぞ。

時に消えたキミと歪曲の十日間―デイ・トリッパー (徳間デュアル文庫)

時に消えたキミと歪曲の十日間―デイ・トリッパー (徳間デュアル文庫)