水野良『ブレイドライン アーシア剣聖記』(角川スニーカー文庫)

 『the Sneaker』誌での連載で細切れに読んでたときはそれほどでもなかったが、長編でまとめてだとさすがに一気にすらすら読ませるし読んでる間は引き込まれる、上手い。逆に連載のまとめになるであろう2巻目が心配になってくるけど。
 とりあえず、角川書店が「ロードスふたたび」を夢見てるのは痛いほど伝わってきた。作者の方は、『the Sneaker』のインタビューを読むと、少なくとも表向きには「新境地を狙う」心境のようではある。が、できてきたものは、固有名詞として和風テイストを振り掛けた量産型ハイファンタジー世界*1で美女を引き連れた俺TSUEEEEE主人公が行く先々で出会う美女・美少女に好意を持たれながら冒険を繰り広げる諸国漫遊記、ぶっちゃけ「アーシアのリウイ」もしくは「水野風カルシファード」だな。

*1:善神は絶対善で悪神は徹底的に悪、双方の勢力は絶対的に対立、人間と妖精は明示的に異種族、等々の構造が日本もしくは東アジア的な多神教じゃない。たまたま主人公が善神側にいてその勢力が一枚岩でないから、あたかも複数勢力が入り乱れてるように見えるだけで、根本は善悪二元論の世界なんだよな。つまりフォーセリアと同じ。名詞や発音が和風なだけ。