山本弘『地球移動作戦』(ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

 野尻ボードの議論を見てからwktkしてたお話がようやく単行本化。シュワイカート飛行士やB612 Foundationが存在せず、あのアイディアを22世紀になるまで誰も思いつかなかった世界のお話、かな。お話自体は、もちろん面白いし一気に読ませるだけのパワーではあるが、しかし「いつもの山本節」ではある。それより、

 この発想には大きな利点がありました。『地球移動作戦』は壮大なスケールの物語だけに、大勢のキャラクターを登場させなくてはいけないことは、最初から分かっていました。何十人というキャラクターを描き分けるのは、けっこうな大変です。すべてのキャラクターについて、性格や容姿のイメージを固めなくてはならないのですから。
 しかし、過去の作品のキャラクターのイメージを流用できれば、大幅にその労力は軽減できます。

↑という作者が正直すぎて笑った。なるほど、キャラクター小説ではなく、物語の流れ自体や謎解きや設定やギミックを読ませる小説ならスターシステムもありか。*1 しかし善し悪しではあるよな。「人類のミームこそもっとも貴重」論者としてついうっかりp.185で誑かされそうになったけど、おかげで、ジェノアと名乗る以上はああいう奴の筈だよな、*2 とか反応できたりして。

地球移動作戦 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

地球移動作戦 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

*1:「本作はキャラクター小説にあらず」と言外に主張する意味も込められそうだし。

*2:加古沢ならもっと適役……いや、さすがに分かりやすすぎるか。