壁井ユカコ『クロノ×セクス×コンプレックス 1』(電撃文庫)(反転部ネタバレ)

 やー、これは面白い。ここからさらに現代日本サイドが絡んできたりするんだろうな。実に楽しみだ。あとがきによればこれでも明るく楽しい話をやろうとした今回のシリーズのコンセプトは自分史上初“読んだ人がドキドキワクク(ママ)する話”だそうで、たしかに最初は雰囲気の明るさに作風が変わったかと思ったけど、事件がエスカレートする度に強まるえげつなさ*1は変わってないなぁ。
 それと、よく考えると結構設定そのものがエグイかも知れん。時間遡行魔法が、いかに倍率75倍とはいえ入学3週間目にあっさり教えてもらえ、たかだか学年トップぐらいでそれを自分自身にかける方法へ自力でたどり着け、濫用したことへのペナルティが給仕手伝い1週間と立候補禁止で済む世界って、何らかの制約がなければとんでもないカオスになりそうだ。*2 で、その制約が、「遡行して何とかしようとするたびにどんどん事態がエスカレートし状況がひどくなること」自体だとしたら、そして体制側はそれを知ってて初心者がひどい目にあうのを最初っから観察し、本当に取り返しが付かなくなったり第三者に被害が及びそうになる寸前まで干渉せずにいるんだとしたら、この世界の魔法使いは全員、殺人級にまで膨れあがった人間関係のドロドロをトラウマとして植え付けられてるのかも。
 明るい方向を目指してこうなら、その反動が出た話はどんなにダークでドロドロだろうか、確かにドキドキワクワクだわ。

*1:もちろん誉め言葉です。

*2:せめて「遡行時間は最大72時間で同じ時へは1回だけ、一度遡行すると24時間は間隔を開ける必要があり、2人ペアでないと使えない」とか「自分が死ぬことでしか発動しない。セーブポイントはひとつだけ」とか。