明日香々一『王国神話―空から降る天使の夢』, 『王国神話 第二夜 約束は夢にとけて』(富士見ファンタジア文庫)(反転部ネタバレ)

 『悠久のアンダンテ』が実に良かったので、古書店から保護。よりピュアにベタベタ甘々の神話。デビュー作からこういうのを書く人だったのね、納得、とか思いながらあとがきを見て愕然。実はドタバタコメディを目指して書き始め(中略)勢いで以って書き上げるとこの内容が出てくるのか。なんとも、宇宙人か異次元人にでも出会った気分だわ。世の中には脳みそかナチュラルに神話が出力される人がいるんだなぁ。
 ところで、この本、「選考会で物議をかもした問題作」だったんだそうで、まぁ惚れた相手と一緒にいるための代償として自分の子どもを捧げるってのが選考者のモラル意識を刺激したんだろうけど、なんつーか、自主規制に慣れた業界らしいなぁ。異世界ファンタジーですよ? 架空世界を舞台にしたフィクションですよ? 現代日本と道徳観が一致しなくて当然、どころか人類の歴史上のいかなる社会にも存在しなかった道徳観念を持ってたって一向にかまいやせんがな。
 もっともそういう観点からは、カタカナ名と西洋風文化の架空世界のお話しで噛むから、カムタだけは勘弁して欲しかった。うーむ、こういうこと*1を気にする俺の方が神経質すぎるのかしら?

王国神話―空から降る天使の夢 (富士見ファンタジア文庫)

王国神話―空から降る天使の夢 (富士見ファンタジア文庫)

王国神話 第二夜 約束は夢にとけて (富士見ファンタジア文庫)

王国神話 第二夜 約束は夢にとけて (富士見ファンタジア文庫)

*1:黄昏色の詠使い』の「イ短調=異端の長」と「灰色=敗者の色」とか『チェイシング・クリムゾン』の「ボウライ列車」とか『ミミズクと夜の王』の「ミミズ+苦」とか。