日野一二三『A=宇宙少女2×魂の速度』(電撃文庫)

 構成パーツ一つ一つはどう見てもバカ話なのに、組み上がったモノはなかなかにええ話でした。ハーレムモノっぽいパターンを見せながら外しまくり、すべてのカプ厨を置き去りにするラストもまた良し。が、ネタ的に「天の光はすべて星」*1のディーン老人を連想してしまったおかげで、真面目なシーンが真面目に読めなくて困った。主人公が「成功したディーン老人、というか清家新一氏」に思えてしまって……
 しかし森羅は主人公が月に到達できることをどうやって嗅ぎ当てたんだ? せめて序章で名前を伝えるなりなんなりしてれば、お金持ちのなんだかよく分からない謎の調査能力かなんかでどうにしかしたってことで納得できるんだけど。『ほうかごのロケッティア』の「なんで終盤になって突然、クラスメイト連中は協力する気になったんだ?」と同様、初読で勢いに任せて読んでるときはあんまり気にならないけど、ふと冷静になって読み返そうとしたりすると気になって仕方がないなぁ。それと、延々と天文学宇宙論の蘊蓄を語るシーンは正直言って寒い。同級の天文オタはともかく、一応は専門の研究機関の筈のところのトップが「宇宙ヤバイ」コピペ朗読レベルの蘊蓄を嬉しそうに開陳するなよ……

A=宇宙少女2×魂の速度 (電撃文庫)

A=宇宙少女2×魂の速度 (電撃文庫)