本田誠『空色パンデミック 1』(ファミ通文庫)

 いやぁ、ともかくラストのオチの落差がすげぇ。なおかつこのオチで脱力せずにハッピーエンドになるのもさすが。二重の意味で劇中劇がこのお話全体のミニチュアになってたわけだ。ストーリーというかキャラの心情の動き自体はどこにでもあるラブコメなんだけど、なんというか、アイデアだけでももう発想の勝利な上に、こういう構造がなかなかに面白い。あと、青井くんが良いねぇ。本人のキャラも妹のエピソードも文句なしに素敵で切ない。
 しかしこれもタイトルに「1」とついてるのが気になるなぁ。当面というか大状況を進展させないお話しならこれみたいな短編をいくらでも展開できそうだけど、それだけしかやらないってこともなかろうし、かといって人間関係やらそれぞれの思い自体はすでに基礎構造ががっちり固まっちゃってるし、どうなることやら。今回のお話しと劇中劇の関係みたいに、この1冊とこれから語られる大きな話がまた相似形で入れ子になったりするのかしら。とりあえず↓の懸念はいいとこついてるように思える。

まずまず面白かったが、"空想病"の設定はどんな状況でも夢オチに持っていけるから、よっぽど構成をきっちりして、読者に「状況開始」と「状況終了」を
示すヒントをいれておかないと「それはないだろ。」といわれるだろう。

空色パンデミック1 (ファミ通文庫)

空色パンデミック1 (ファミ通文庫)