小川一水『博物戦艦アンヴェイル』(朝日ノベルズ)
設定も世界の謎もストーリーも面白そうなんだけど、なんかいまいっちょチグハグな印象。あとがきで「帆船と騎士」「テクノロジーとファンタジー」の噛みあわなさは次巻以降で解消、と、分かってやってるように書いてるけど、そんなとこよりも、主人公のキャラに違和感が。モチベーションが、他に出来ることもないし身を堕とすのもいやで、たまたまそれなりの武芸の腕があるので、という「でもしか騎士」。裁判と鞭打ちに大いに違和感を感じるような現代日本の庶民に近いメンタリティーと、戦闘における水夫や砲兵の死を悼みもしない舞台と時代に相応しい精神。ある程度はレーベルの色と対象年齢的な制約のせいはあるんだろうけれど、それにしてもチグハグ感が否めない。ま、次巻以降の予定がすでに立ってるようなので、評価はそれ次第かしら。
で、主人公はともかく、奇矯王陛下が実に現代人だな。まさかいくら何でも現代日本から時空を越えて辿り着いた人物で、それ故にあの時代あの場所では知られていない戦術戦略を駆使できた、なんてことはなかろうけど。あと世界観的に気になるのはお嬢さんの海嫌い、単に泳げないだけじゃなくむしろラブクラフトっぽい海産物嫌い? こんな人物が生まれ育つってことは、島嶼国家というよりはもっと広い、それなりに内陸部が存在する島なんだろうな。
- 作者: 小川一水,藤城陽
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2010/03/19
- メディア: 新書
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