井上雅彦[監修]『異形コレクション 45 憑依』(光文社文庫)

黒史郎「ゴルゴネイオン」

 演奏されると何かがおこる音楽、ならよくある話だけど、それ自体が力を持つ存在として人の魂の間を渡り歩く音楽、か。なんというか、よくもこんな発想ができるもんだ。クルーシュチャ方程式なんかと並ぶ、「活字でしか表現できないクリーチャー」だなぁ。

井上雅彦「抜粋された学級文集への注解」

 こっくりさん≒くっくるさん≒クックルスー、地口一発芸かよ。世界的な内戦ってのもなんやねん、それ。地球統一政府でもできたんかいな。

上田早夕里「眼神(マナガミ)

 「わからなさ」故の怖さというホラーの面白さの源泉と、SFとしての理屈付けのバランスって難しいよなぁ、と思わせる一作。むろん、評価の高いプロ作家たる作者がそのバランスに留意してないわけはないだろうから、あくまでも好みの問題なんだけど、正体に関する長々とした考察と「わからないけどやっていくしかない」ラストに、どうにも食い合わせの悪さを感じる。

憑依―異形コレクション (光文社文庫)

憑依―異形コレクション (光文社文庫)