入江君人『神さまのいない日曜日 ?』(富士見ファンタジア文庫)(透明部ネタバレ)

世界を救いたいって、立派な事だけどさ。それちゃんと世界に聞いた? 世界、救って欲しいって言ってた?
そんな、ね。そんな巨大なものに立ち向かえるほど、私は強くないのよ。そんな、世界を救う研究みたいなものに立ち向かったら、自分がどうなるか、分かってるのよ。

 「世界を救う」と決意して綺麗に終わる投稿作から、あえて続きを書いたら、そりゃ、まずはその決意を問う話になるのは必然。しかし「救おうとした世界って、それ、もう無いよ」「救うっていっても、何をしたら救った事になるのか、救われる側も知らないよ」ってのはシビアね。どうしようもなさとどうにもならなさ、周りがアイを保護し隔離しようとする様子と彼女の未熟な強さのバランスが実に素敵だ。いやぁ、前巻を読み終えたときに感じた続刊蛇足化への懸念が杞憂で済んで良かった。
 しかし別の蛇足が……「もう一つの神話」が取って付けたように出てきて、本編のお話しと意味づけについて関わり合うことなく、あっさりフェイクだと明かされてフェードアウト、はまだ良しとしよう。*1 しかしエピローグのアレは何よ。本編の雰囲気と読了の余韻に浸らせてくれ。敵キャラだのバトル展開の予感だの、次巻のプロローグにでも持って行って、「お、今巻はまた違う雰囲気になるのか」と思わせてくれれば充分だよ。

神さまのいない日曜日II (富士見ファンタジア文庫)

神さまのいない日曜日II (富士見ファンタジア文庫)

*1:最初はきちんと絡んでたのがページ数的にカットされ、でもカラーの修正はスケジュールに間に合わず、なんて大人な事情を想像してみたり。