宇野朴人『神と奴隷の誕生構文』(電撃文庫)

 こりゃまた、いい具合に青臭い直球どストレートなバトルもの。過去話のクライマックスでザクザク死人が増えるあたりが容赦なくてGood。被搾取者には論理的な思考を発展させにくい言語を強要するとか、なかなかに嫌らしくてよいね。『覇壊の宴』とか『無限のリンケージ』とか、同じ方向性のネタでも、いろいろと切り口があるもんだ。
 ただ、異世界ファンタジーなのに、話の中核をなす論理の構成がカタカナ英語の語呂合わせ、使われる用語もかたっぱしから英語のルビ、というのはやはり萎えるな。一応は現実世界ともつながりのある設定だし、「祖英語(アーキ・イングリッシュ)」という設定で作者なりに最低限の辻褄合わせはやってる、*1 少なくとも何か理屈をつける必要性は感じてるのではあるんだろうけど。
 ところで、以前にも感じたことがあるが、ここにまた一つ「大きな大陸一つだけしか存在しない世界」が増えたな。本作中だと、単に「技術レベルとして大型外洋船は存在しない、よって他の大陸については作中では触れられない」で良さそうなところを、わざわざ地の文でエナ・ガゼには大陸がひとつしかないと断言してるんだよな。うーむ、何故にこういう「世界に大陸がただ一つ」設定が好まれるのだろう?

神と奴隷の誕生構文(シンタックス) (電撃文庫)

神と奴隷の誕生構文(シンタックス) (電撃文庫)

*1:とはいえ物理法則まで違う異世界やからなぁ。せめて千数百年前程度まではこの世界と共通の地誌と歴史を持つパラレルワールドとかの、適切なタイミングでラテン語とゲルマン語がブリテン島に流入したという条件を満たす世界なら「英語のような言語」も存在し得ようが。