柳内たくみ『ゲート 2 炎龍編―自衛隊彼の地にて、斯く戦えり』(アルファポリス)(透明部ネタバレ)

 今巻も、なんというか変な言い方だけど、実に楽しく面白く良い具合に「嫌な話」だねぇ。テュカの壊れ方にノリコさんとその家族に伊丹の過去。そしてもちろんバトルは燃えるし設定はいろいろ凝ってて楽しいし陰謀もゲートのあっちでもこっちでもてんこ盛り。文庫に小分けしたりせずに分厚くみっしり字の詰まった構成にしてるのは正解だな。これを細切れに隔月刊で読まされたりしたら禁断症状がたまらんだろう。日頃ラノベばっかりなせいか、いろんなレイヤーの話がそれぞれにたっぷり書き込まれて同時並行で絡み合いながら進むお話し作りが実に楽しい。
 なおかつ「良い話」で、伊丹がどんどん格好いい主人公に見えてくるあたりが上手いよな。外形的には龍殺しの英雄で亜神の使徒にしてお貴族様で奴隷持ちだし。次巻最終刊ではそろそろ強敵が欲しいところ。とはいえ戦術級でのどつきあいに関しては自衛隊に敵いそうな相手方がいないし、別のゲートを生成しそれを通じて日本国政府以外の地球側勢力と通じた一派とかかな、かろうじてガチで対抗できるとしたら。もしくは魔法的な即時情報伝達手段を隠し持っていて、陰険合戦レベルで張り合ってくるか。
 で、SS投稿掲示板の「商売繁盛編」前にチラ見したときおそらくは接触編と炎龍編の間だろうと思って読むのをいままで控えてたんだけど、いま見たらなんと未完だったのか。作者的に今のところ冥門編の書き直しが最優先だろうしもちろん冥門編は出てくれなきゃ困るんだけど、こっちの続きもそれはそれで期待。

ゲート―自衛隊彼の地にて、斯く戦えり〈2〉炎龍編

ゲート―自衛隊彼の地にて、斯く戦えり〈2〉炎龍編