南井大介『小さな魔女と空飛ぶ狐』(電撃文庫)

 つくづく、飛びモノとマッドサイエンティスト/エンジニアが好きな作者やねぇ。そして、「その世界の一般的技術水準に比して高度に発達しすぎて魔法にしか見えない科学技術」も好きそうだし、もっと好きそうなのが「才能ある奴が調子こいていい気になったところでどん底にたたき落とす」ことっぽい。

「貴様が人並みの倫理を持ち合わせていたとは驚きだな。だが、貴様は一つ忘れている」
薄笑いを唇の端が耳元まで届きそうな狂笑に変え、
「私は狂っているんだよ。お前達が狂わせたんだ」

なんともイヤなお話の展開で、いいぞもっとやれと言わざるを得ない。そこはさすがにレーベルがレーベルだけに、一応はラブコメチックな雰囲気をまといつつ主人公サイドの勝利と言おうと思えば言えなくもない気もしないではない結末に落ち着きはするんだけど、どう考えても世界は更に泥沼になりました、というエンディングだよな、これ。「過剰報復により敵対者を威圧して平和を保つ」が国是の国vs「大量破壊兵器の先制使用で他者の戦意を奪う」味を知った国、さて最終戦争が勃発する前に「白い魔女」は創世記機械を建造できるか!?

小さな魔女と空飛ぶ狐 (電撃文庫)

小さな魔女と空飛ぶ狐 (電撃文庫)