スラッシュドット ジャパン | アメリカでの宇宙エレベータ競技会に日米合同チームが出場

 いや、ネタとしてはこういう話は大好きなんだけど、このタレコミと編集者って何? まるで先人の業績に対する敬意ってものが感じられないなぁ。

そもそも「宇宙エレベータ」って訳語はどうよ?
 「軌道エレベータ」を知らないままにSpace elevatorを直訳したんかね。
宇宙エレベータについては日本では意外とその歴史が深く、既に1997年にはその理論を紹介する書籍「軌道エレベータ-宇宙へ架ける橋」が出版されていた。
 仮に宇宙エレベータでググッても、日本語のトップにちゃんと軌道エレベータ - Wikipediaが出てくるんだが、それも読んでないんだろうな。軌道エレベータの着想は、宇宙旅行の父コンスタンチン・E・ツィオルコフスキーが1895年に既に自著の中で記述している。とあるように、既に100年以上の研究の積み重ねがあるのだよ。*1 ちなみに『スペース・ツアー』のpp.63-64によると、日本では1961年の『S-Fマガジン』誌の記事が軌道エレベータの概念の初の紹介だそうで、これも既に半世紀近く前だわな。。
最近になってEdward博士なる人物がNASAの出資で研究を行い、カーボンナノチューブ級の素材があれば実現できることがわかり、米国ではにわかに話題となっている様子。
 97年の『軌道エレベータ―宇宙へ架ける橋』などという失礼ながらマイナーな出版物を知ってて、なんでこんなに研究(と主にSF作品への登場)の歴史を知らないんだろう。使用する素材にどんな強度が必要かという研究は少なくとも1975年までは簡単にさかのぼれるし、*2 CNTを使うというアイデアも、『軌道エレベータ―宇宙へ架ける橋』のp.67によれば東京大学教養学部で化学に関連するSF的な講義をつづけておられる山崎 昶博士が, 数年前の講義録のなかに書いておられるとのことで、少なくとも1990年代初めの日本では既に周知の事実だったのに。

*1:とはいえ当該著書が公表されたのは『スペース・ツアー』によると1959年らしいし、物理的には正しいアイデアだが技術的にきちんと解析したものではなかったそうな。技術的にきちんとしたものとしては翌1960年のYuri Artsutanovによる記事が元祖になるらしい。

*2:Space elevator - Wikipedia, the free encyclopediaにある J. Pearson (1975). "The orbital tower: a spacecraft launcher using the Earth's rotational energy". Acta Astronautica 2