大迫純一『神曲奏界ポリフォニカ アイソレーション・ブラック』(GA文庫)

 ポリ黒版「はじめてのおつかい」かと思ったらマナガの子離れ、と思わせておいて実は主題は絆の強さと特殊さ? 子離れできない親というか、どう見てもマティアに依存してるマナガが可愛い。「楽士に精霊が依存」と言い換えれば普通のことだとあの世界では思われてるのかもしれんが、実は……というあたりがやっぱポリ黒の大ネタなのかしら。
 気弱で神経質で研究一筋型の上司を色香で迷わせながら指一本触れささずに、「女であることを武器にしたことは、一度もない」って、やな被害者やなぁ。割とこれまで、加害者側がよく言えば一途悪くいえば自己中の極みみたいなパターンが多かったような気がするんで、ちょっと新鮮。マナガとマティアが別行動なのもあわせ、本筋的にはちょっと番外編? セルがどうのこうのって話は、そのうち赤で回収されるのかな。
 ところで、アパートで管理人室にしか電話が無くて住人が呼び出されるなんて描写、どのくらいの世代まで通じるのかしら。俺の世代ですら貧乏学生と下宿であればまだしも、社会人の住まうアパートだとちょっと珍しい光景だよなぁ。社会とテクノロジーのレベルは、神曲関連を除くと、1970年代くらいなのかしら。