仁木英之『胡蝶の失くし物―僕僕先生』(新潮社)

 旅の仲間がまた増えたうえに、今度は露骨に敵対者が出てきて「続く」。一話ごとのお話もすっきり片がつかずに引きずるようになってきたような。うー、悪い意味での「普通のお話」になったりしませんように。
 それにしても相変わらず王弁くんはヘタレニート全開で、怖がるだけの役だったりほとんど出番無しだったり、たまに働いてみてもうっかりはまって結局助け上げられたり。実にもう他人とは思えない御仁ですな。何か最後は役に立ったみたいだけど、アレはお金持ちニート生活で身につけた「役に立たない芸術技能」ということにしておこう。しかし手には吉良の引き綱、頭上には第狸奴、そして今巻でさらに袖の中に。まさか何か特別なものでもあるのか、単に「扱いやすい魂」が親しまれやすいだけの凡人で納まるといいなぁ。

胡蝶の失くし物―僕僕先生

胡蝶の失くし物―僕僕先生