さすがにあの刊行ペースの人の口からいわれると説得力がある。

ここ二、三年というのは無茶をしすぎたなというのが、大いなる反省としてあります。リボ払いで破産したようなものですよ。(笑)
(中略)
僕は自分に課しているルールがひとつあって、「できないことは、できないという」ことです。「できないことを、できるという」のは、それはやる気の表明じゃなくてただの嘘だから。でもその文言に、最近ちょっと修正が加わりまして。
「できないことを達成してしまうのもだめだ」と。「やばい、月に締め切りが三本ある。どうしよう」というスケジュールを無理矢理にやってのけたとして、でもそれは、やっただけであって、できたのではないと思う。体か魂か、なにかを必ず削っているんですよね。無理を続けた結果、小説がだめになるのか、体を壊しちゃうのか、人間関係が疎かになっちゃうのか……それって決して幸福なことではないよなと考えて。努力して、不可能を可能にする行為は一見美しく賞賛されそうですが、確実に代償を支払っているはず。リボ払いだから。(笑)
読者のみなさまや出版社が真に望んでいるのは実は『今の一冊』ではなく『次の一冊』なのだと痛感する機会も多く。不可能をちゃんと受け入れていく大切さをこの二年半で学びましたね。